白点病の感染ルートを解明する
近畿大学農学部水産学科
水族環境学研究室
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海水域の白点病は、海産白点虫 Cryptocaryon irritans という繊毛虫によって引き起こされます。この繊毛虫は世界中に住んでいます。近年、白点虫が世界中の海で養殖魚に猛威をふるい、マダイやトラフグなどの養殖に深刻な被害を与えています。白点虫に感染した魚は、食欲低下、窒息や浸透圧調節の異常などで死んでしまいます。しかし、現在、その対処法としては、白点病が発生していない海域へ"いけす"を移動させることしかありません。しかしながら、移動先において、白点病に再感染したり、あるいは白点病を蔓延させたりということも、危惧されています。これは、自然海域におけるC. irritans の分布・生態が明らかになっていないことにも起因しています。

トロホント
Size: 0.08~0.5 mm
シスト (トモント)
Size: 0.2~0.5 mm
セロント
Size: 0.04~0.08 mm
プロトモント
Size: 0.2~0.5 mm
白点虫の生活サイクル
(世代時間: 6~28日)
白点病になったマダイ
(トロホント)
白点虫の感染体
セロント
白点虫のシスト

私たちの研究室では、上述の問題を解決する第一歩として、リアルタイムPCRを用いた迅速にかつ定量的に検出する手法の開発をしました(1)。本手法を用いることで、最短半日もかからずにC. irritansを検出することが可能です。本手法を用いることで、自然環境におけるC. irritansの分布・生態を明らかにできることが期待されます。分布・生態を明らかにすることで、より効果的な対処策が講じることができるはずです。現在、これまで採取してきた試料を解析し、C. irritansの分布・生態について明らかにすべく、研究に邁進しています。

(1) Taniguchi, A., Onishi, H. and Eguchi, E. (2011) Quantitative PCR assay for the detection of the parasitic ciliate Cryptocaryon irritans. Fisheries Science, 77:607-613.