和歌山県にある近畿大学水産研究所白浜実験場の養殖水域には、干潟が隣接しています。この干潟は、水産研究所が所有する第一養魚場にあります。以前、この第一養魚場を埋め立てようという話が持ち上がった時、原田前所長が強く拒否しました。

「第一養魚場にある干潟は、養殖場水域の浄化に大きく寄与している。この干潟をなくすと、養殖場水域が汚れてしまう。」

　これが理由です。1980年代のことです。

　豊かな生態系を育む干潟を舞台として、様々な研究が世界各地でなされています。顕著な例が、オランダからデンマークまでに亘るワッデン海における研究です。ワッデン海をはじめとする干潟研究によって、干潟環境の持つ浄化能力が、科学的に明らかとなってきています。原田前所長は、感覚的にそのことがわかっていたようです。

　養殖水域と干潟。これらの相互関係を意識しながら、干潟の持つ浄化機能について科学的に明らかにするために、日々研究に励んでいます。